こんにちは、ラクーン広報の山崎です。
先週に引き続き、「ニューヨーク流通視察ツアー※」レポート(全6回)の第5弾をお届けします!
山崎が個人的にニューヨークで気になるお店やスポットをめぐってきたので、今回はそれらをみなさんに共有していきたいと思います。
主に、店頭では手に取ってみたり試着したりするだけでその場で商品を購入できない「実店舗をショールームとして利用しているEC企業」のショップを覗いてきましたよ~!
その①、その②、その③、その④を読んでいない人は、そちらもよろしくお願いします。
※ラクーンでは例年、ニューヨーク流通視察ツアーに参加したい社員を募り、応募者の中から選ばれた社員1名が外部主催のツアーに参加できる、という社内制度が存在しています。今年は幸運なことに、わたくし山崎が選ばれました!
革新的なアイウェアブランド「Warby Parker」
Warby Parker(ワ―ビーパーカー)にとってのリアルショップとは、ブランドの世界観を体現する場であり、オンラインで販売されているアイテムを実際に手にとって試すためのショールームとして位置づけられています。
店舗では、メガネやサングラスなどアイウェアのフルラインを試すことができる他、一部店舗では視力検査を受けることもできます。
気に入ったアイテムがあればその場で注文を行い、後日自宅に配送されるという仕組みです。
Warby Parkerは売上と直結しない中長期なブランディング戦略を多く実施して、5年という比較的短い期間でロイヤリティーの高い顧客を獲得し、安定的な成長と競合優位性を手に入れることができました。
そんなWarby Parkerが持つ、4つの強みを紹介していきます。
1)良い製品と良い価格による「合理的なミレニアル(デジタルネイティブ)世代の獲得」
製造と販売の間にいるミドルマン(中間業者)を排除し、デザイナーを社内に抱えたことで、オシャレでコストパフォーマンスの良い製品を販売することを実現。
また、オンラインストアのみでスタートしたので店舗や販売員などの固定費をかける必要がなく、販売価格を抑えることができました。
アメリカの一般価格と比較すると、1/4程度の価格でメガネを提供しています。
2)ソーシャルグッドな関係構築による「ロイヤリティが高い顧客の獲得」
現在、全世界で10億人がメガネが必要な状態にも関わらず手に入れることができません。そのため、Warby Parker はメガネが購入されると、慈善団体を通じて発展途上国に寄付をしています。
単発でメガネを寄付するのではなくメガネの視力検査と販売方法をトレーニングし、トレーニングを受けた人にとっては継続的な収入源となる支援を、そしてより多くの人にメガネが届くような仕組みを作っています。
そのため、セレブリティの中にもWarby Parker のファンは多いそうです。
こうして獲得した顧客は、エバンジェリストとなり、Warby Parker を宣伝してくれます。
3)ストア以外のコンタクトポイントによる「SNSでの拡散」
無料トライアルプログラム「Home Try-on」を利用すれば、メガネを5本まで選んで試着することが可能です。しかも送料は無料で、気に入ったフレームを選んで送り返すだけ。
利用者は、ハッシュタグをつけて試着姿をセルフィーしてSNSにアップします。
「どれが一番、似合うと思う? #warbyhometryon」
4)ブランディング戦略による「教養の高い知性あるブランドの確立」
「本」というインテリジェンスなメタファーにブランド・ストーリーを絡ませることで、「教養の高い知性あるブランド」を構築することに成功しました。
そして、洗練された製品、驚きを与えるキャンペーン、社会貢献という要素をブランドイメージに紡ぎ上げたのです。ぜひとも見習いたい戦略ですね。
シリコンバレー発のメンズアパレル「Bonobos」
Bonobos(ボノボス)は、スタンフォード大学MBAを持つアンディ・ダンとブライアン・スパリーによって、2007年にシリコンバレーで創業されたeコマース専業のメンズアパレルブランドです。
メンズパンツと言えばジーンズが主流のアメリカで、ジーンズに物足りなさを感じている消費者のために、豊富なスタイルやカラーのオシャレなパンツの販売を開始しました。
創業者が実店舗での購入が苦手ということもあり、創業当初はECショップのみで販売。
ネット系ビジネスの仕組みに関する知識を活かし、ソーシャルメディアを活用したマーケティングやソーシャルメディア上でのストーリー展開を活用したブランド構築など、WEBを活用したビジネスモデルを進めました。
これまでにない素材やデザインにこだわったデニムやチノパンなどがヒットし、創業から3年で年商約15億円のビジネスにまで拡大。
そのブランド力を活かし、ジャケットやシャツ、スーツ、鞄、シューズなどを生産しています。
Bonobosのショールーム専用ショップ「ガイドショップ(GUIDE SHOP)」は、「店舗で商品をチェックし、購入はオンラインサイトで」がコンセプトです。
オンラインストアで扱っているパンツやジャケット、シャツなどを自由に試着できますが、購入はできません。
店頭で気に入った商品はスタッフがその場で注文手続きを行うか、顧客自身が家に帰ってからお店のWEBサイトで注文する仕組みです。
商品は最短で注文の翌日に届き、送料は無料。
また、来店前にWEBサイトから予約をすると、「ボノボスガイド」と呼ばれるスタイリストからフィッティングのアドバイスを受けることも出来ます。
ショップでは商品を販売しないため、品出しや棚卸作業や在庫保管のためのバックヤード、レジ担当が不要。
店舗物件面積を試着用のスペースに活用し、最小限のコストと人員で店舗を運営しています。
顧客にとっても買い物カゴを持ち歩いたり、購入するためにレジに並んだりする必要がなく、購入しなければならないというプレッシャーもありません。これは嬉しいですね。
ニトリの「手ぶらdeショッピング」
日本ではインテリア小売の「ニトリ」が、店頭で欲しい商品のバーコードを読み取らせると、そのままニトリのEC上で決済が行える「手ぶらdeショッピング」というアプリをリリースしています。
最近ニトリが増やしている都心店舗は電車での来客が多く、自宅配送を希望するお客様が多くいるためです。
都心店舗は郊外型店舗と比べて1フロア当たりの面積が小さく、在庫を店舗管理できるほどのスペースがありません。
そこでニトリは店舗をショールーム化し、在庫管理コスト削減と効率的な店舗オペレーションを実現しようと考えたのです。
また、アプリの活用は顧客管理にも有効です。
誰が何を買うかを悩み、何を買ったかを把握できると、お客様の属性に合った、より最適な製品を製造・販売・提案が可能になります。
実際、ネットの方が安くて持ち帰る手間もないという理由から、スマホ片手に実店舗(電気屋さんやアパレルショップなど)をショールームとして利用している方も多いのではないでしょうか。
お店にお金を落とさないのは申し訳ないな…とは思っても、合理的な消費者はネットショッピングを選択してしまいます。
今後、日本でも本格的に実店舗のショールーム化が進んでいきそうですね。
実店舗を経営されている方はネットショップを第二の「ショッピングカート」として導入したり、ネットショップを経営されている方は実店舗を「ショールーム」として運営したり、リアルとネットを融合させた「新しいショッピング体験」を模索していく必要がありそうです。
以上、ニューヨーク流通レポ(その5)でした!
最終回もお楽しみに~!
参照サイト
NY発アイウエアブランド「ワービー・パーカー」がファッショニスタに支持される5つの理由
世界で最もイノベーティブな企業と評されたWarbyParkerのブランディング戦略